今回のインタビューは、絵を描いたり、書を書いたり、句を詠んだり、創作活動に忙しく暮らしていらっしゃる三田昌治(さんだ まさはる)さんです。
三田さんは、約20年前に大台町の上菅に土地を購入し、移住されました。
ここで暮らす前は、伊勢の障害者施設で長年働き、施設を利用される利用者さんと、絵を描いたり、演劇をしたりと創作的な活動をしていました。当時の仕事は、天職と言えるほど、好きなことが生かせる仕事だったそうですが、施設での活動中に怪我をし、左指の一部を失ってしまいました。
そのことがきっかけとなり、今後、どのように暮らしていくかを考え、たまたま、別荘地として売り出されていた大台町の上菅のことを知り、移住を決めたそうです。
三田さんのご自宅のあるこの場所は、上菅地域の中でも高台にあり、どこまでも山の風景が広がっています。毎日、山の向こう側から昇る朝日が見え、春には新緑の山々。この高台の立地ならではの贅沢なロケーションです。
海よりも山が好きだという三田さんですが、この場所から見えるこの風景が、ここを購入する一番の決め手になったそうです。
【暮らしの楽しみ】
ご自宅の一室に、三田さんのアトリエがあります。室内には、色鉛筆画や水彩画、書などの作品が所狭しと置かれています。どの作品も、大きなキャンバスに気持ちよく描かれたものばかり。
その作品の中には、色鉛筆を使った優しい表情の仏様の作品が、何枚もありました。ご実家が松阪の仏教寺院「朝田寺」だったことにも影響を受け、以前から、自然と仏画を多く描いていたそうです。
今までに、ハガキサイズの水彩画で、たくさんの仏様を描いていたことがあり、作品数は、最終的に108枚にもなり、その作品を京都の法然院で展示をしたという貴重な経験もお持ちです。
常に何か制作したり、考えたりと、自分の好きなことに時間をたっぷり費やして、充実した生活を過ごしていらっしゃいます。
その他に、長年習っている句をまとめた「句集」や、お孫さんの誕生を記念して製本した「手作り絵本」もありました。
句集の中には、身近な植物や生き物について詠まれた作品が、手描きのイラストとともにまとめられていて、大台町の豊かな自然を感じるとともに、三田さんのこの土地への愛情も伝わってきます。
「目標があることが大切」と仰る通り、大きなキャンバスに新しい作品を制作し、Cafe夢楽さんに展示している作品を、毎月定期的に入れ替えたり、三田さんの日々の暮らしをまとめた「かわら版」は、ご自宅の畑のこと、身近な自然のことなど、手書きの文章と絵で丁寧にまとめられ、お友達への近況報告として、年に2~3回欠かさず発行することを続けているそうです。
作品作りの楽しみについてお聞きしたところ、出来上がった時の喜び以上に、ご自分の作品を通して人と人との交流が生まれることが楽しいそうで、「怪我で失ったものの代わりに、ここでの今の暮らしがある。」と仰っていました。
【地域の人との交流】
また、「大台町に移住した20年前と、何か違うことや変化はありますか?」とお聞きしたところ、「ここで、仙人のような一人暮らしをしないといけないと思っていたのに、ご近所にお友達がたくさんできて、こんな風に楽しく暮らしていること。」だそうで、ご近所の方々とは、自宅でできたお野菜を交換しあったり、時々ごはんを一緒に囲んだりと、一人で暮らしていても寂しいと感じることがないほど、良い交流が続いています。
しかし、地域の方々の中には、一人暮らしのお年寄りがたくさんいて、なかなか自分から他の人と交流することが苦手だったり、億劫に感じて外出しない方も多く、三田さんの気掛かりなことの一つだそう。
そんな方でも、「行ってみようかな。」と思えるような、小さな交流会が上菅でもあれば、ここに居ながら、楽しく暮らせるきっかけになるのではないかと思い、今後は、自分の持っている技術や経験を生かし、もっと地域のことを考えた楽しいことを実行していたきたいそうです。
まずは、自分の作品をいろんな方に観に来ていただけるように、今年も展覧会の開催を予定していて、会場では、歌の披露やトークもしようと計画しているそう。展覧会の開催が楽しみです。