今回のインタビューは新田(しんでん)にお住まいで、多気郡スポーツ協会バドミントン部会会長、日進地区スポーツ協会理事長、大台スポーツ少年団大台JBC(大台ジュニアバドミントンクラブ)代表、大台町バドミントン協会代表など、数々のスポーツ振興の肩書きをお持ちの谷川 琢省(たにがわ たくみ)さんです。
公式ラインも7アカウントほど管理されているという多岐にわたる活動。
その原動力はどこから湧いてくるのか、お話を伺いました。
【仲間と始めたバドミントン】
幼少期からの友人たちと今でも濃く付き合い、協力し合ってみんなが楽しめるイベントを企画、運営。なおかつ、担い手不足で困っている歴史ある地区のスポーツ協会の理事にも就任。
若い世代の人手不足は日進地区に留まる問題ではありませんが、琢省さんは様々な役職を掛け持ちしながら精力的に活動しています。
バドミントンを子供たちに教えたり、大会を主催したりされていたので、ご本人がずっとバドミントン競技をされてきた方かと思いきや、
「いや、やりたい気持ちはあったんですけど、やる機会がなく過ぎてきて」 とあっさり否定。
しかし、やがてバドミントン経験者の奥様と出会われます。
「運動神経には自信があったんでやっつけたろうと思ったんですけど、コテンパンにやられて(笑)」
実は奥様は小学生の頃に全国3位、高校時代にも国体へ出場歴のある腕前だそう。
「それは勝てるはずないわと思って、週5,6日練習に励みました(笑)」
元々大人だけで楽しんでいたバドミントンサークル「フレームショット」ですが、バドミントンをやりたい子供たちが増えてきたため、2021年春、「フレームショットアカデミー」という小学生に指導する団体を立ち上げます。
そして、指導していた子供たちが卒業する際、中学校の部活動にバドミントンがない事実。
続けたくても続けられない子供たちがいました。
【田舎はスポーツの選択肢が少ない】
中学校にバドミントン部がないことは知っていましたが、何とかしてあげたいと琢省さんは大台中学校に進学する町内の6年生に独自でアンケートを取りました。
「大台中学校にやりたいクラブがありますか?という質問に対していいえの回答が43パーセントあったんですよ。やりたい競技がない子らは何がやりたいかその他の項目もつけて書いてもらったら、既存の部を越えてバドミントンが多かったです。」
バドミントンを続けたい子供たちの保護者や同志と共に、結成していた「クラブ活動に関する検討委員会」から学校や教育委員会にバドミントンができる環境を用意できないか交渉しました。
そう簡単にバドミントン部創設とはいきません。生徒数も少なければ教員の負担軽減が課題の現場では、部活動を社会体育に移行せざるを得ない状態になりつつあります。部を増やすことも、既存の部と入れ替えることも叶わないままあっという間に3年間は過ぎていきます。
それでもバドミントンをやりたい子どもたちの受け皿として、2022年秋「大台バドミントン実行委員会」を設立。中学生になってもバドミントンができる場を提供し、2022年から2023年にかけてほぼ2ヶ月に一度はバドミントンの大会を開催し続けました。
また、放課後にこのような地域クラブに参加したくても、スクールバスは一日一便。部活終了後にしか出ないため、バス通学の生徒は待機を強いられていました。そこで、やりたい競技が地域クラブにある子たちが、早く帰宅できるようバスを増便してもらえないかと働きかけたそうです。
「今年の4月から実現されました。私が言ったからかは分かんないすけど(笑)」
琢省さんがかつて通った協和中学校(現在は大台中学校と合併)は、進学当時、ソフトテニスか野球の二択でした。
「僕は本当にスポーツは何でも好きで小学校の時には野球やサッカーもやってましたし、器械体操も好きで、特に習ってないですけどバク転とかバク宙とかやってて」
何にでも興味を持ち、色々やってみたい。そしてバドミントンも挑戦したい競技のひとつだったのです。
6年生にアンケートを取った頃、大台中学校には6種目のクラブがありましたが、今年2024年の夏に3年生が引退し、ソフトテニスと卓球、創作部だけになってしまいました。ますます選択肢がなくなる現実。
「やりたいことがやれる環境を子供らに作ってやりたい」
その想いが強くあります。
【みんなに喜んでもらいたい】
話を伺っていると、感じるのはその熱さ。
きっといつも色んな人たちに熱弁をふるわれているのでしょう。
そのモチベーションは何か紐解きたくて、色々聞いていくと根っこの部分には「人に喜んでもらいたい」という純粋な気持ち。
今でも地元の友達には毎年誕生日のメッセージを送り、同窓会の幹事をし、友人の結婚式には自費で大掛かりな舞台から作ったイリュージョン(子供騙しな手品ではないそうです!)の余興。友人や妹たちの結婚式で何度も披露し、ついにはご自分の結婚式で新郎自らその総集編を行われたそうです。
自分のことはどうでもいいから人のためになることに力を注ぎたい。
手品やマジックが大好きだったいたずらっ子は、いつのまにか入念な準備に労力を惜しまず、人を喜ばせるサプライズを仕掛け、こどもたちの未来を見据えて活動する大人に成長していました。
【非番は活動に充てる(笑)】
琢省さんは、24時間勤務のお仕事をされており、インタビューに伺った日も前日の朝からの勤務が明けた翌朝のことでした。
「非番は活動に充てる時なんで(笑)」
笑いながらおっしゃいますが、冗談でなくそれが彼の日常なのでしょう。
「もちろん何かあったら出動しますけど、基本は活動してますね」
趣味について伺っても曖昧な返答。
「時間はないです。バドミントンの活動が忙しくて、今度指導者の資格も取るんですけど自分が練習する時間はないです(笑)」
基本、家にはあまりいない。
様々な団体の役職に就いているため、各方面で打ち合わせや会合。
子どもたちへのバドミントン指導はもちろんのこと、学童保育の子どもたちに体験してもらったり、リフレッシュ大台学園(町内の小中学生と地域住民の交流を支援し、放課後、週末に体験講座を開いている)の講師として赴いたり、いつもの体育館にいるだけではありません。
「家のこととか子どものこととか、妻には負担かけてるなって思いますけど…でも今やらないといけないことなんで」
奥様の理解はもちろん、2年生になる息子さんも最近バドミントンをやりたいと参加し始めたそうです。
「明日からとか、次今度やろうとかじゃなくて、やる時はいつも今すぐ行動したいんで。10年後にこうなりたいってことに対して後回しにしたくないんで」
確かに10年後にこうなっていて欲しい状況を作り出すために、その直前に行動を起こすのでは遅い。子どもたちもどんどん減っていく。
次々と力強く湧き出す言葉は、行動に直結しています。
【将来のこどもたちのために】
かつて大台町内の各地区にあった様々なスポーツ少年団。
「スポーツやりたい!っていう需要はめちゃめちゃあるんですよ」
7月末に日進地区スポーツ協会主催で行ったバレーボール大会には約70名の参加者が集まりました。
しかしながら、各地区では運営が困難になっている現実。
「いよいよもう大台町でひとつのスポーツ協会になっていく時なんかなぁと」
学校の部活動から地域のクラブ活動に移ったとしても、そこでまた指導者や運営する人材が逼迫することは目に見えています。
子どもたちがやりたい競技をやらせてあげられる環境をみんなで協力して作っていきたい。
こども達に選択肢を与えてあげたい。
そのために琢省さんは、自分の時間のほとんどをこの活動に注ぎ込んでいます。
今回のインタビューの後にも別件がひとつ、そして午後からは職場のバドミントンクラブへ。
こちらも職場での健康管理の取り組みの一環として、琢省さんが立ち上げられたそう。
「家でじっとしてることはないですね」
というその言葉通り、今日も熱く全力を尽くしています。
多気郡バドミントン協会
instagram : takigun_badminton