Vol.20 宮嶋 哉行 さん

Vol.20 宮嶋 哉行 さん

今回のインタビューは、上三瀬に暮らす音楽家の宮嶋 哉行 (みやじま さいこう)さんです。
大台町を拠点に活動している宮嶋さんの「音楽」について、詳しくお聞きしました。

【大台町に移住するまで】

宮嶋さんは愛知県名古屋市で生まれ。2歳頃からバイオリンを弾き始め、20代から始めたライブ活動は40年ほど続けています。
以前は、東京や京都、ニューヨークなどを拠点に活動をしていましたが、都会の暮らしに疲れ、田舎暮らしをしたいと思い移住先を探し始めます。しかし、いざ探し始めると宮嶋さんが思い描くような場所がなかなか見つからなかったそう。

そして、奥様のご実家でもある大紀町を何度か訪れるうち、隣町の「大台町」に興味を持ち、ここへ移住を決めたそうです。大台町で暮らし始めてから20年ほど経つそうですが、移住を決めたのは「宮川」の存在が大きかったと言います。

宮川(大台町)

【宮川の魅力】

宮川の源流域は、吉野熊野国立公園内にある国指定の天然記念物である渓谷「大杉谷」です。大杉谷から宮川へ流れる水は透き通り、川の深い場所では非常に美しいエメラルドグリーンが印象的です。大台町といえば、「宮川の美しさ」という人も少なくありません。宮嶋さんにとって宮川は、気持ちが良くて落ち着く場所なのだそう。

町内で家を探していた時も旧宮川村で探したそうですが、その当時は住める家が見つからず、現在お住まいのご自宅は、地元の方に紹介してもらって購入されました。離れには、宮嶋さんのアトリエもあります。

宮嶋 哉行さん

【宮嶋さんの音楽について】

宮嶋さんの音楽についてお聞きしてみると、「クラシック音楽の演奏ではなく、ちょっと珍しい音楽」と言います。

ピアノ、アコーディオン、エレクトロニクス(電子ノイズ)と共演する他、コンテンポラリーダンスとコラボレーションしたり、アート作品が展示される美術館やギャラリーで演奏したりと、一般的に知られているクラシックのバイオリン演奏ではなく、その時その瞬間にしか生まれないような生の音楽です。最近は一人でバイオリンを弾きながら、その場の音と即興演奏をすることが多いのだそう。

以前、東京で暮らしていた時は、音楽だけで食べていきたいと強く思っていたこともあり、都会に居ないといけない、最新・最先端の音楽を聴いていないといけないという考えが強く、常に新しいものを追いかけていたそうですが、今はそれだけではなかったことに気づいたのだとか。

大台町での暮らしは、大きな音を出しても近隣と距離があるので気にする人がいないこと、耳に入ってくる音に人工的な音が少ない分、雨音、風の音、鳥の囀り、、、自然の音がたくさん入ってきて、音楽に良い影響を与えてくれます。また、目に映るものが人工物ではなく自然なのも、創作活動にはとても良い環境です。

「音楽は自分の気持ちで変わるものだから、自分らしさを求めて演奏すると音が濁ってしまって、それはあんまり必要ないと思っています。この静かな環境の中でどんな音がいいだろうと思って丁寧に音楽を奏でていると、即興の音楽がぴったりなんです。」と、今の音楽スタイルについて話してくださいました。

宮嶋 哉行さん

【音楽と介護】

大台町に移住して、音楽家としてバイオリンを弾きながら、はじめは地元の方に紹介していただいた土木関係の仕事をしていましたが、その後は介護のスタッフとして老人介護施設で働き始め、約10年になるそうです。現在はコロナ禍ということもあり、三重県を中心に音楽活動をしていますが、以前は国内だけに留まらず海外公演を行うことも多く、ヨーロッパでの演奏や韓国の国際ダンスフェスティバルにも参加するほど精力的に活動を行ってきました。

さまざまな場所で講演を終えて帰ってくると、また介護の仕事をする日常に戻るという生活は、何も関連がないように感じますが、とてもバランスが良いそうです。

「職場でも、介護の仕事以外に利用者さんに向けてバイオリンを弾くことがありますが、僕の演奏を聴いて認知症のお年寄りが涙を流してくれたり、普段声を出すことができない人が歌おうとしたり、心が動く瞬間がありました。この人たちのためにもっと丁寧に弾きたいと思うし、バイオリンを弾くことがとても楽しい。」と宮嶋さん。

今まで以上に、その時その瞬間を大切に、丁寧に音楽を演奏するようになったそうですが、大台町を拠点にするようになってから、音楽が以前と変わったと言われることも多く、宮嶋さん自身もこの環境が影響して、いい具合に変化してきたと感じているのだとか。

介護の現場は、利用者さんとしばらく一緒にいて心が通じたと思ったら、亡くなってしまうことが多くとても儚い。関わり合える時間はとても短くて貴重な時間で、そんな介護の仕事から学べたことは大きいのだそう。

宮嶋 哉行さん

「最近は三重県を拠点にしていることもあり、ここを拠点にすることで都会にはないこの環境の良さや大台町のことを知ってもらえるいい機会となれば。」と仰っていました。

※ダンスの表現形態に共通の形式を持たない身体を使った自由な表現のこと。

宮嶋さんの今後のスケジュールは、instagramの「rasaikou」のページで最新情報が見られます。
7月は、9日(土)18:00〜ハッレ倭にて、17日(日)14:00〜伊勢現代美術館にてイベントが行われます。

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