Vol.8 大西 かおり さん

Vol.8 大西 かおり さん

今回のインタビューは、旧宮川村の久豆にある「NPO法人大杉谷自然学校」の校長先生、大西かおり(おおにしかおり)さんです。

大杉谷自然学校では、地元の人が自然の暮らしの中で得てきた知恵や伝統を大切に、宮川流域に残る伝統漁法「しゃくり」を学んだり、家族で川遊びをするイベントなどを主催しています。

大杉谷自然学校の風景 校舎

【自然学校を立ち上げるまで】

大西さんは大台町で生まれ、中学卒業まで旧宮川村の大井で過ごしました。そして、高校入学と同時に町外で暮らしはじめ、大学卒業後は、小さい頃からの夢「海外で活動してみたい」を実現するために、青年海外協力隊の隊員としてフィリピンへ。理数科教師として約3年間活動された後、再び大台町で暮らし始めました。

そして、その後は、(社)日本環境教育フォーラムが主催する「自然学校指導者養成講座」に参加することを決めたそうですが、ちょうど、現在、大杉谷自然学校の事務局として使用している建物の大杉小学校が廃校になる年で、廃校後にどのように活用していったらいいかという課題が上がっていたそうです。そこで、大西さんは、自然学校を作ったらどうかと提案。1年半の受講終了後、町やその他の協力者の方達とともに、自然学校を立ち上げ、21年間活動されてきました。

休日の過ごし方について聞いてみても、自然学校のことが頭から離れないと仰っるほど、大西さんの暮らしの一部になっている自然学校の活動ですが、どうしてそんなに力を入れて取り組んでいるのか、お話を伺ってみました。

大杉谷自然学校の風景 川遊び

【自然学校で大切にしていること】

大西さんが自然学校について学んでいた頃の日本は、各地でさまざまな環境破壊が顕著になっていた頃。今まで当たり前のように、身近に自然があった暮らしが姿を消していき、人がどんどん自然と乖離してしまった時代でした。
子どもたちが、自然から学び体験することが少なくなってしまい、各地で「自然学校」の立ち上げが活発な時代だったそうです。

また、現代の子どもたちの多くは、インターネット環境の中に身を置いていることが多く、インターネットは簡単に必要な情報が得られて便利だけれど、自分で体験して考え、培った確かな情報とは違います。子どもたちが、自然の中で、自分が体験したことは確かなもので、こういった体験が欠けてしまっていることに、とても危機感を感じているそうです。

そういった理由から、自然学校のプログラムには、自然の中で自由に遊んだり、今まで自然の中で身につけてきた知恵を、地元のお年寄りから学んだりするものが多く取り入れられています。

また、大西さんが、自然学校をスタートさせた時に決めたのは、「お金を稼ぐこと」。

不便な土地で、元々身の回りにあった自然をお金に換える仕組みは、当時、新たなビジネスモデルでした。お金を稼ぎ継続できれば、今まで目を向けられなかったことに対する周りの意識も変えることに繋がっていくと考えていたそうです。しかし、それが一番難しいことでもあるので、永遠の課題でもあると仰っていました。

大杉谷自然学校の風景 しゃくり

【文化を残すために】

自然学校のプログラムの中には、季節ごとに、旧宮川村地域に残る暮らしの知恵や文化を、地元のお年寄りから直接教わるものがいくつかあります。
ここ最近はコロナ禍の影響で、直接地域の人から学ぶことが難しくなってしまったそうですが、これを機会に、今まで地域の人から教えていただいたことを、自然学校のスタッフが主体となって伝えていく取り組みをしています。その中には、伝統漁法の「しゃくり体験」や、昔ながらの「お茶作り体験」があります。
また、自然環境の変化だけでなく、手に入る道具も減っているので、今あるものを代用して、時代に合わせた方法で続けていく工夫もしているそうです。

大杉谷自然学校の風景 餅つき

【今感じること。仕事は仲間をつくる】

組織として約20年の年月が経ち、大西さんの中で幸せに感じるのは、いろんな課題を相談しながら、共に成長していくことができるスタッフがいること。
長くなってくると、スタートした当時のように新たなことにチャレンジしたり、今までのやり方を打ち壊していくのが難しくなり、どうしても保守的になってしまいます。

しかし、幸いにも、さまざまな経験を持つ若いスタッフの方々に恵まれ、違った考えを取り入れたり、今の時代に合わせた新しいことに取り組んでいくことができるので、変わり続ける勇気をいつも持つことができるそうです。

また、地域の子どもたちに向けての活動も活発で、大台町教育委員会受託事業として、学校の放課後時間に自然の中で遊んだり、文化的なことに触れる「のびのびクラブ」を開催したり、森の中で自由に遊ぶ「森のようちえん」を定期的に開催し、自然の中での学びの時間を持ってもらえるようにしているそう。大台町は子どもの数が少ないけれど、そんな自然学校がある町の子どもたちは、自然いっぱいの環境で育ち幸せですね。お話を伺っていて、とても羨ましくなりました。

NPO法人大杉谷自然学校
住所 : 三重県多気郡大台町久豆199 
Tel : 0598-78-8888 
HP : https//osugidani.jp/
youtube : NPO法人大杉谷自然学校

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