Vol.41 森本 慎也 さん

Vol.41 森本 慎也 さん

今回のインタビューは、大台町小切畑(こぎりはた)の自動車整備工場、森本モータース代表の森本 慎也(もりもと しんや)さんです。 YouTuberの肩書でも有名な慎也さんは、車の問題だけでなく、もっと広い視野を持ったとても、とても自然体な方でした。

【まちの車屋さん 森本モータース】

森本モータースは旧宮川地区の旧道沿い、隣は田んぼ、目の前は山という自然豊かな環境。
しかしながら、インタビューに訪れた時もお客様がいらっしゃる傍らで近所の同業者さんが出入りされたり、部品の注文をしたりと、のどかな田舎の修理工場はゆったりしているようで実はとても忙しい現場でした。

森本モータース

創業は慎也さんの祖父で、長年にわたり地域住民の車を守ってきました。
最初から継ぐつもりだったのか尋ねると、
「いや、そんな車好きって訳じゃなくて… 車屋さんになりたいって感じじゃなかったですね。継げといわれたこともなかったですし…」と否定。

「何か機械いじりとか、手先でいじることが好きやったんで、ものづくりとかエンジニア的なことをやりたいと思ってました」
子どもの頃はプラモデルやゲームが好きだったという慎也さん。特に車に拘りはありませんでしたが、高校進学の際、工業高校の自動車科に進むことを選択。将来が明確に決まったのはこの時でした。その後は名古屋の専門学校で学び、ディーラーに就職。整備士として順調にキャリアを重ねて家業に入ります。

森本モータース

都会へ出て行って帰ってこない人が多く、後継者問題に悩まされる事業者が多い中、すんなりUターンされた慎也さん。都会の空気が合わなかったのでしょうか?
「いや、楽しかったっすよ。色んな地方から集まってくるじゃないですか。その子らと友達になれたんで」

世界が広がって充実した生活だったようですが、都会の生活に全く未練はありません。
「えーと、目的と手段を明確に分けてる感じで、“楽しいこと”“嬉しいこと”が目的だとすると、その手段として“都会へ行く”じゃないですか。僕の場合はその手段が都会へ行くことじゃなかっただけで…。地元の人とか居心地良いんで…」
とさらりと語ります。

人によって価値観は様々。都会だの田舎だの優劣があるわけではありません。
「自分はこっちが良かったってだけっす(笑)」

森本慎也さん

整備工場の現場は父と二人きりですが、親子であるが故のやりにくさやジェネレーションギャップは全く、なくなんとも力の抜けた関係です。
経験に裏付けされた父のやり方、息子が習ってきた新しいやり方の間で衝突することはまずないそうで、新しい技術や設備投資にも積極的。
「うちは新しいものはどんどん取り入れるって感じなんで…。おじいちゃんもそうで、その当時誰も持ってなかったテレビとか洗濯機とか買ってて…。あたらしもん好きです(笑)」

森本さん親子

【YouTuber モリモトシンヤ】

当初、ブログで車屋さんの情報発信を始めた慎也さんですが、実は文章を書くのが苦手でした。一方、若い頃にゲーム実況の動画を配信していた経験があったため、動画なら続けられそうだとYouTubeを始めます。
内容は日常の自動車整備の様子や車にまつわる知識について。コンテンツはもちろん、慎也さんの淡々とした話し方が聞きやすい、分かりやすいと評価され、今では23万人ものチャンネル登録者数を誇ります。(2024.6月現在)

「キャラは一切作ってないですから!ようやらんし(笑)。いつもと同じテンションと変わらず普通にやってますね。そうしないとどっかで止めちゃうと思ったし…」
基本的には人見知りで、目立ちたがり屋でもない。
しかし、顔を出して自らの仕事を全世界に公開することに全く抵抗はなく、むしろおもしろそうというポジティブな一面も。画面の中の慎也さんも目の前の慎也さんも思慮深いながらも、なんとも正直で自然で不思議な空気感が漂います。
自動車整備工場としては充分に忙しく集客に注力する必要のない今、配信を続けている目的を聞いてみると、
「自分がおもしろいからっす(笑)」

森本さんYouTubeチャンネル

「もうひとつは練習もありますね。サブチャンネルの方では質問に答えるってことをやってるんですけど、聞かれたことにちゃんと答えるって難しいじゃないですか。」
「うまく話す練習っす」
講師を頼まれたこともあるそうで、仕事はまだまだ多岐に渡り広がっていきそうです。
きっとおもしろそうだと思えば、何でも挑戦されるでしょう。

【気になると調べたくなる】

家業とYouTube運営で忙しい日々の中、プライベートで楽しんでいることについて伺うと、なんと読書という答え。
「ちょっとずつ変わってきたんすけど」と趣味の変遷について説明してくれました。
プラモデルにゲーム。20代の頃はスキーにハマり雪山へ通い、バイクでもあちこち遠征。野球少年だったため、今でも高校野球が必ず観るとのこと。そして読書。
どうやら社会問題に興味が出てきたらしく、インタビュー前日に読み終えた本は子ども食堂の現状について書かれたものでした。
「不景気やって言うてもみんなそこそこ豊かじゃないっすか。でも何かうまくいってない感じが、何があるんやろ?って」
漠然としたたくさんの疑問符の中から、今一番の関心は「子どもの貧困」についてだそう。
「自分で何ができるかわかんないし、何もできないかもしれないですけど」

森本慎也さんの本棚

大台町の人口減少問題についても、慎也さんなりの答えを持っていました。
いくら移住者が増えても自然減少の方が圧倒的に多い状況で、
「もうそういうのはいいかなと思うんですよね。人を呼び込もうとか特産品作ろうとか」と冷静に周囲を見渡しています。
「それより今ここにおる人のためにフルベットでお金使ってほしいなって。学校もそうやし子供らもそうやし、高齢者とか福祉に。」
「なんか北海道のどっかでそうしたら結果的に人口増えたとこあったすよね。」と既に事例を勉強済みの様子。
「それでV字回復はないけどなだらかに着地(笑)」

車の修理なら問題点を探っていってそこを突き止め、パーツを取り替えたり、整えたりして本来の機能を取り戻すことができます。
社会問題はそう簡単にはいきませんが、気になることを調べるのが好きな慎也さんは、問題を紐解く過程として本を手に取るのです。

【そういうのが今大事っすね】

強調された言葉は人とのつながりについてでした。
基本的には人見知り。しかしYouTubeをしていなければ絶対に知り合うことのできなかった企業や遠方の同業者と繋がることを楽しみ、地域の消防団で地元の先輩後輩たちと交流。淡々と飄々としているようで、町の商工会青年部ではなつまつり実行委員長も務めるほど人望もあり、ドライに見えて、地域の小さなお祭りが消えていくことを憂いています。
「これからは絶対こういうのが必要っすね。半ば強制的にでも集まる場所が要ると思います」

森本慎也さん

日々、みんなの車の問題を解決している整備士さん。
「僕ひとりじゃなんもできんすよ」と前置きしながらも、周りのみんなの幸せを考え、日々模索しています。

モリモトシンヤ
YouTube : モリモトシンヤ

 

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