Vol.13 村田 一紗 さん

Vol.13 村田 一紗 さん

今回のインタビューは、小滝にお住まいの造形作家、村田一紗(むらたかずさ)さんです。

村田さんは、トヨタ三重宮川山林を利用して、森と人を繋ぐ活動を行う「森へ行く日」の木工房の一部を、一年ほど前から間借りして、大台町を拠点に作品づくりをされています。

インタビューのはじめに、「大台町での暮らしはどうですか?」とお聞きすると、「毎日がとても幸せです」とひと言。どんな幸せな暮らしをされているのか、詳しくお話を伺ってみました。

村田 一紗 さんの作品

【工房探しから大台町へ】

村田さんは、大阪芸術大学短期大学部で版画を専攻。卒業後は、木材、金属、ガラス、石など、さまざまな素材を扱う長野の工房へ入り、本格的にものづくりの道へ。約四年間、長野の工房でものづくりについて教わりながら働き、テーブルや椅子などを制作してきました。

その後、長野から実家のある明和に戻り、「ここで働く気がする。」という直感のまま伊勢の結婚式場に入社。ウェディングプランナーとして結婚式のプランニングをしながら、結婚式で使う大道具や、椅子の修理、新郎新婦の希望で一緒にウェディングアイテムを作ったりと、ものづくりと仕事のバランスを取りながらいきいきと仕事に取り組んでいたそう。

そのうちに、本格的にものづくりができる環境を整えていこうと、実家から通える距離で借りられる工房を探しましたが、なかなかいい場所に巡り合えず、はじめは実家のガレージで制作を続けていました。そんな中、たまたま「森へ行く日」の工房が大台町にあることを知り、訪問。広々とした大きな工房を見せてもらい、思いきって話をしてみたところ、間借りさせてもらえることになり、この場所での制作がスタートしました。

村田 一紗 さん

しかし、ものづくりに夢中になればなるほど、工房までの往復2時間の時間が勿体ない、もっと制作に時間をあてたいと思うようになり、暮らしも大台町へ移すことにしたのが、移住を決めた理由でした。

いつも物事を決める時は、自分の気持ちに真っ直ぐに、直感を信じて即決してきたと言う村田さん。初めは、賃貸で借りられるアパートか一軒家で探していましたが、なかなか条件に合う物件がなく、何軒か見せてもらってようやく住みたいと思う今の家を見つけました。しかし、家主さんは購入してもらえることを望んでいて、賃貸では村田さんの予算よりも高かったため、思い切ってその一軒家を購入。

賃貸ではなく購入したことで、気兼ねなく自分の好きなように改装できるので、居心地の良い住まいを整えていくのが、今の楽みの一つになっているそう。「家を購入して本当によかったです。」と、この笑顔でした。

村田 一紗 さん

【大台町での制作活動】

大台町は国内有数の多雨地域で湿気が多く、材木関係のお店も少ない。木工作家として工房を持つには、条件の揃った場所とは言えません。その点について、どう感じているのかお聞きしてみると、「湿気については、できるだけ工房の風通しを良くしたり、木材の乾燥を促すために小さくカットしてから乾燥させたり、完成するまでに何度も木材の伸縮を確認しながら調整するといった手間を掛けることで、そこまで大きな問題として捉えていない。」という答えが返ってきました。

村田 一紗 さんの作品づくり

そういった山間にある工房ならではの難しさよりも、とても静かな環境で落ち着いて制作ができ、常にこの土地に暮らす様々な鳥の囀りが聴こえたり、四季折々の植物の美しさに触れたりできることが、この場所で制作する良さであり、作品づくりに欠かせないものになっているそうです。

図面を描かず、有機的なフォルムや、素材それぞれの面白さを生かした作品が多い村田さんにとって、「大台町の環境には、常に五感に触れるものがあり、日常の中にものづくりの源になるものがたくさん隠れている。」と仰っていて、自宅近くのお散歩は、作品づくりのヒントを得るための大切な日課になっているのだとか。

工房を見渡すと、対話するように、じっくりとその木材の良さを引き出しながら作られた滑らかな曲線のお皿やスプーン、近所のお散歩で見つけた植物の可憐さに魅せられ作られたオブジェなど、この土地から生まれた作品がいくつも並んでいました。

また、工房の近くに材木店は少ないけれど、大台町産をはじめ、珍しい木材を扱う武田製材店さんが近くにあること、地元の方々が、親身になって村田さんの活動を助けてくださることで、新しい土地でも安心して活動続けることができているとも仰っていました。

村田 一紗 さんの作品

【これからの作品づくりと暮らし】

これからも四季を肌で感じながら、生活と仕事が心地よく流れる暮らしを続けていきたいという村田さん。
制作している器や額縁は、tou(トウ)という屋号で発表しており、今後は、様々な方にtouの作品を直接手に取って見てもらえるように、作品展などを計画中とのこと。どんなイベントが開かれるか、楽しみですね。

tou(トウ)
instagram : tou_ap

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